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・桐木雅史がタイ経由でラオスに派遣された。これまでマラリア・寄生虫・昆虫学研究所(IMPE)の所長だったDr.Khamliene Pholsenaが保健省保健予防局長(Department of Hygiene Prevention)に転出し、IMPEの所長にはDr.Souliya Inthakoneが着任していた。
主要な調査研究目標は次の2点であった。

 

1) コーン島以北にみられるgammaN.apertaのメコン住血吸虫に対する感受性実験的検討
2) コーン島以北のELISA陽性反応児童の検便による住血吸虫感染調査

 

コーン島とその周辺地域では1989年以来、WHO/WPROによる徹底的な集団駆虫によって住民の感染率がいちじるしく減少したため、予期した通り虫卵材料の入手がきわめて困難となり、研究上の大きな障害となった。そこで集団駆虫が未だ実施されていないというコーン島の北西約8?のB.Nadiの住民30名を検便し、2名の卵陽性者から得られたミラシジウムによるHouaygnang-Noy産貝への感染実験を行ったが、不成功に終わった。また、この村落で入手した犬2頭を剖検したが住血吸虫の感染はみられなかった。さらに、タイのマヒドン大学から供与された感染betaN.aperta5個を獨協医科大学に持ち帰り、貝から得られたセルカリアを未感染マウスに感染させて得たミラシジウムによるHouaygnang-Noy貝への感染も成功しなかった。同時に持ち帰った感染マウス1頭の肝から得たミラシジウムによる貝への感染も成立しなかった。以上の結果から、コーン島以北のgamma N.apertaにメコン住血吸虫の感受性を認めることはできなかったが、この問題について結論を急ぐのは尚早と思われる。本調査では、とくに十分な虫卵材料を得られなかったのは痛手であった。中間宿主貝の室内飼育法を含めて再検討したい。
一方、昨年の調査でELISA値が高かったコーン島以北の小学校学童57名をボルマリンー合成洗剤集卵法によって検便したが、予想に反していずれからも住血吸虫卵は検出されなかった。この点に関しても慎重な再吟味の必要があろう。
本年度は保健副大臣のDr.K.Rasmyが労働副大臣に転任され、また、直接のカウンターパートであったマラリア・寄生虫・昆虫学研究所長のDr.K.Pholsenaが保健省保健予防局長に転任されたのは一つの試練であった。

 

 

 

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